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なぜ消える?通勤ラッシュの救世主「多扉車」の興亡

土屋武之・鉄道ライター
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多扉車の元祖・京阪電鉄5000系
多扉車の元祖・京阪電鉄5000系

 長年、朝の通勤ラッシュで活躍してきた「多扉(たとびら)車」をご存じだろうか。通勤電車の乗降扉は1車両につき片側3、4カ所が一般的だが、これを5、6カ所にしたのが多扉車だ。扉を増やすことで各駅での乗降をスムーズにし、電車の遅延を防ぐ目的で投入された。

 首都圏では1990年に山手線に登場して広く知られるようになり、2000年代にかけて鉄道各社に普及した。しかし、10年ごろから各社で“引退”が進み、20年、JRや東武線などでの運用終了を最後に姿を消した。

 今回はこの「多扉車」について見ていきたい。

元祖にして唯一「京阪電鉄5000系」

 多扉車の元祖は、70年に関西に登場した京阪電鉄5000系だ。こちらも21年1月29日、朝の混雑時間帯における「片側5扉」での運用を取りやめ、使命を終える。多扉車の歴史の中で「全車両が多扉」という唯一の存在だった。

 車内の特異な構造も注目された。「片側5扉」での…

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土屋武之

鉄道ライター

1965年、大阪府豊中市生まれ。大阪大学で演劇学を専攻し、劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。出版社勤務を経て97年に独立し、ライターに。2004年頃から鉄道を専門とし、雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事などを担当した。東日本大震災で被災した鉄道路線の取材を精力的に行うほか、現在もさまざまな媒体に寄稿している。主な著書に「ここがすごい!東京メトロ」(交通新聞社)、「きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)など。