
福田さん(仮名、40代男性)は、あるメーカーの営業職です。産業医としてこの会社を訪問していた私は、福田さんに声をかけられ「出社するために久しぶりにスーツを着たところ、かなりきつくなっていて、びっくりしました」と相談されました。在宅勤務に切り替わって半年ほどたった昨年9月のことでした。
40歳以上が対象「メタボ健診」
もともと福田さんは体形維持には気をつけており、ショックだったといいます。ただ、在宅勤務で外に出ることが激減し、体重計に乗ることもなくなっていました。慌てて体重を計ると、一昨年の健康診断のときに比べて6キロ増だったそうです。
福田さんは「これだけ体重が増えるとメタボ(メタボリックシンドローム=内臓脂肪症候群)と判定されるのでは、と心配です。生活習慣病のリスクもあるのではないでしょうか」といいます。
糖尿病や高脂血症などの生活習慣病を予防するため、2008年から40歳以上を対象に「特定健診」(メタボ健診)が行われています。腹囲に加えて、血液中のコレステロールかトリグリセライド(中性脂肪)、血圧、空腹時の血糖のいずれか二つ以上が基準値を超える場合、「特定保健指導」の対象になります。特定保健指導は、保健師などが生活習慣を見直すサポートをします。
体重増加のリスク
福田さんの一昨年の健…
この記事は有料記事です。
残り914文字(全文1465文字)
佐藤乃理子
産業医・労働衛生コンサルタント
2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。