
BNPパリバ・河野龍太郎氏に聞く(上)
新型コロナウイルスの感染拡大に振り回された世界経済。経済が低迷しても株価だけは上がっている。なぜなのか。河野龍太郎・BNPパリバ証券チーフエコノミストに聞いた。【聞き手は経済プレミア編集部、平野純一】
--米国はダウ工業株30種平均が3万ドルを超え、新型コロナウイルス感染前を上回っています。コロナで景気は悪いはずなのに、なぜ株高なのでしょうか。
◆河野龍太郎さん 新型コロナウイルスの感染拡大で、世界各国で強力な財政・金融政策が打たれ、その資金が株価に向かっていることは確かです。ただ、米国ではもっと別の理由があると考えています。米国はこの30年くらい、富裕層ばかりに所得が集中し、平均的な層の所得はほとんど増えていません。皮肉にもこれが株高の背景にあります。
--どういうことでしょうか。
◆米国は所得階層で見て、1980年に上位1%の人の所得は全体の11%程度でしたが、現在は20%まで増えています。一方、下位50%の人の所得は80年の20%から現在は12%程度まで減りました。
平均的な層の所得が増えないので消費は増えず、インフレ率も上がりません。富裕層は消費性向が低く、あまりおカネを使いません。結局、貯蓄ばかりが増え、それがアセット(資産)に向かって株高になっているのです。
株高は構造的要因で起きている
--構造的な株高ということですか。
◆そうです。これは構造的な問題です。中央銀行は景気の落ち込みを避けて雇用を維持するためにゼロ金利政策を続けるのですが、中央銀行に経済の分配構造を変えることはできません。すると、ゼロ金利を続けても上がる…
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平野純一
経済プレミア編集部
1962年生まれ。87年毎日新聞社入社。盛岡支局、サンデー毎日編集部、経済部、エコノミスト編集部などを経て2016年から現職。金融、為替、証券、マクロ経済などを中心に取材。