
新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活に大きな変化をもたらした。コロナ不況の収束と今後の経済回復に向け、私たちは何をすべきなのか。財政学が専門で世界恐慌など経済危機に詳しい金子勝・立教大学特任教授に聞いた。金子氏は「コロナが産業と技術の転換を加速し、世界で主導権争いが起きている」と説いた。【聞き手は経済プレミア編集長・川口雅浩】
金子勝・立教大特任教授に聞く(1)
――2020年をどう振り返りますか。
◆金子勝さん 今年はコロナの感染拡大が世界的に深刻になり、経済に大きな打撃を与えました。この1年、コロナが産業と技術の大転換を猛烈な勢いで加速させた気がします。情報通信、エネルギー、バイオ、医薬など、画期的な産業や技術の転換とコロナの感染拡大は重なっています。これには歴史的に大きな意味があると思っています。
――具体的にどんなことでしょうか。
◆ゲノムの解析で新型コロナのワクチン開発が短期間でできるようになり、不確定な要素もありますが、創薬が進んでいます。コロナと直接の関係はありませんが、情報通信ではAI(人工知能)の予測に基づき、いろんな制御ができるようになりました。
エネルギーの分野では再生可能エネルギーと蓄電池のコストが劇的に下がっています。天候などを予測し、地域ごとに小規模分散で効率よく太陽や風力の発電ができるようになってきています。
コロナを克服するため、環境や人権等にも配慮した新たな経済回復を目指す「グリーンリカバリー」のような動きが出てきており、EU(欧州連合)はじめ世界中で広がっているのも今回の特徴です。
世界で分断が加速
――転換期かもしれませんが、世界は混沌(こんとん)と…
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川口雅浩
毎日新聞経済プレミア編集長
1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部