
新型コロナウイルスの感染は収束するどころか、今なお拡大が続いている。金子勝・立教大学特任教授へのインタビューは菅政権の政策運営に話が及んだ。金子氏は「アベノミクスのほころびがコロナ下でバブルを起こし、菅政権は隘路(あいろ)に陥っている」と警鐘を鳴らした。【聞き手は経済プレミア編集長・川口雅浩】
金子勝・立教大特任教授に聞く(2)
――安倍晋三政権から菅義偉政権となりましたが、政府の対応はいかがでしょうか。
◆金子勝さん 菅さんは首相になる前は閣僚として総務相の経験しかないので、携帯電話料金の引き下げやデジタル庁の創設くらいの政策しか出てきません。携帯電話料金を下げるという話はわかりますが、NTTがNTTドコモを完全子会社にして、筆頭株主の国が政治的に料金を下げさせるというのは経済政策としてどうかと思います。
本来はNTTの開発力がなぜ落ちてしまったのか、真剣に考えないといけないのに、話が料金や端末価格に矮小(わいしょう)化してしまっています。
――「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」という脱炭素化の取り組みはいかがでしょうか。
◆河野太郎行政改革担当相が再生可能エネルギーを普及させるための規制緩和などに取り組んでいますが、菅政権の成長戦略の実行計画を見ると、「再生エネを最大限導入する」と書いてあるだけです。この「最大限」っていうのがミソで、ほんのちょっと増やしただけでも「最大限」と言うことができます。
一方、成長戦略は「原子力も活用する」としています。実はこっちの方に力点があって、旧態依然とした電力産業の利権を守るようでは、まったく意味がありません。
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川口雅浩
毎日新聞経済プレミア編集長
1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部