
最近の若者は「電話をかけない」「電話を避ける」といわれています。しかし、コロナ禍となる前(2019年4~7月)に大学生を調査したところ、意外にも音声アプリや携帯電話で「声のやりとり」を日常的にしていました。どのような目的で誰と会話するのでしょうか。
モーニングコール好きな若者
「ラインで10分したら起こしてほしいと言われて送ったけど返事が来ない。スタンプ連打しても既読がつかないから電話でモーニングコールした。そのままだらだら1時間半くらい話した」(女子大学生)
ラインにはスタンプを連打すること(スタ連)で鳴り続ける通知音をモーニングコールにして起こすといった使用法があります。それでも起きない場合に通話を利用していた例です。
また、家でくつろぐ時に、つなぎっぱなしにするといった利用法も聞かれました。
「帰宅途中にビールとハッシュドポテトを買って、家に着いたら電話するのを楽しみにしていた。ときおりビデオ通話にしながらずっと無駄話していた。気づいたら寝落ちしていた」(女子大学生)
電話・通話には特有の親密性があり、文字を使ったSNSと違って相手の時間を独占するパーソナルなやりとりができます。上記の話のように、学生たちは友人や恋人など親しい関係の人とのやりとりに音声を日常的に用いていました。
その相手は、友人が最も多く、次に恋人や家族で、ゼミやサークルの知人と続きました。また、若者同士ではライン通話、フェイスブックのメッセンジャー通話などが使用され、家族とのやりとりには携帯電話もよく使われていました。
大切なことは声で
また、大切な相談や相手を説得する時に、声でやりとりしようとする傾向が…
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藤田結子
明治大商学部教授
東京都生まれ。慶応義塾大を卒業後、大学院留学のためアメリカとイギリスに約10年間滞在。06年に英ロンドン大学で博士号を取得。11年から明治大学商学部准教授、16年10月から現職。専門は社会学。参与観察やインタビューを行う「エスノグラフィー」という手法で、日本や海外の文化、メディア、若者、消費、ジェンダー分野のフィールド調査をしている。