毎日家業×創業ラボ

経営危機を救った人脈と意地・鈴木隆史さん

清水憲司・毎日新聞経済部副部長(前ワシントン特派員)
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栄鋳造所の鈴木隆史社長=清水憲司撮影
栄鋳造所の鈴木隆史社長=清水憲司撮影

 製造業の「要」として戦後の経済成長を支えたものの、近年は安価な海外製品に押されて廃業するケースが多い鋳物業界。東京・八王子の「栄鋳造所」の4代目経営者、鈴木隆史さん(47)は何度も襲ってくる危機を乗り越え、会社を飛躍させました。連載の3回目は、リーマン・ショックをバネにグローバル展開に踏み出した経緯を追いかけます。

私の家業ストーリー<3>

 2008年、交通事故で急死した父敏雄さんが使っていた会長室には、金庫が二つあった。社長の鈴木隆史さんが鍵を探して開けてみると、一つ目には敏雄さんの何十年分もの給与明細が収まっていた。もう一つの金庫から出てきたのは、消費税や社会保険料の納付書の束。慌てて計算機をたたくと、総額8000万円。その頃、栄鋳造所はリーマン・ショックのあおりで売り上げが急減していた。「これで終わった」。一時は夜逃げしないといけないと思い詰めた。

 税金は税務署に掛け合って何とか分割払いを認めてもらったが、世界的に製造業が苦境に陥る中で、仕事が消えていた。

 経営をつなぐことができたのは、後継者育成塾「はちおうじ未来塾」の関連で出席した異業種交流会での出会いがあったからだ。あるパン店経営者が、たい焼きチェーンを出すので、その金型を大量に作ってほしいという。鋳物業界では、たい焼きの型は精度を求められない「誰でもできる仕事」。同業者には「あそこも落ちたな」と陰口をたたかれたが、そんなことを気にしている状況ではなかった。

「できます」活路を開いた新製品

 交流会では、大手電気機…

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清水憲司

毎日新聞経済部副部長(前ワシントン特派員)

 1975年、宮城県生まれ。高校時代まで長野県で過ごし、東京大学文学部を卒業後、99年毎日新聞社に入社。前橋支局を経て、東京経済部で流通・商社、金融庁、財務省、日銀、エネルギー・東京電力などを担当した。2014~18年には北米総局(ワシントン)で、米国経済や企業動向のほか、通商問題などオバマ、トランプ両政権の経済政策を取材した。