
藻谷浩介氏に聞く(2)
世界で最近話題になった国や出来事について、藻谷浩介さんが本連載でこれまで執筆した内容に関連して語ってもらうインタビューの第2回。今回はレバノンの首都ベイルートで起きた大爆発と英国のブレグジットです。【聞き手は経済プレミア編集部、平野純一】
--2020年8月にレバノンの首都ベイルートで大爆発がありましたね。
◆藻谷浩介さん 18年にベイルートを訪れた際に、爆発事故があった港の近くまで行きましたが、柵があって中には入れませんでした。東京でいうと竹芝桟橋のような場所で、爆発で新橋や銀座でも大被害が出たようなイメージです。町の大きさやレバノンの地形から言えば、神戸港のハーバーランドで爆発が起きたという方が近いかもしれません。
「モザイク」の国レバノン
--なぜ、あの場所で大規模な爆発が起きたのでしょうか。
◆大量の爆発物を、当局が外国船から押収して、都心の真横に放置していたわけですが、なぜ押収したのか、誰に管理責任があったのかもよく分かりません。ここにレバノン政府の困った構造があります。
連載「レバノン首都ベイルート『中東のパリ』の今を見に行く」(2018年7月23日)にも書きましたが、レバノンは言葉はアラビア語ですが、宗教面では「モザイク」そのものです。
国民の4割は古来のキリスト教徒で、マロン派、シリア正教徒、アルメニア正教徒など。6割弱がムスリムで、その中にもスンニ派とシーア派が併存し、アラウィー派やドゥルーズ派というシーア派からの異端分派も、少数ながら根強く残っています。
--国を治めるのは大変ですね。
◆オスマントルコやフランスの支配下では、各…
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藻谷浩介
地域エコノミスト
1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。