
経営改革を巡る対立で一時は会社を追われた星野さん。その混乱を乗り越え、会社を継いで、まず目指したのは、ビジネスモデルの転換と、それに不可欠な人材の獲得でした。
星野佳路の家業のメソッド
当時はバブル崩壊の瀬戸際の時期。リゾート法が1987年にできて全国にホテルや旅館が急速に増えてしまった。その中で、私は築後45年にもなる古い旅館を引き継ぎました。
宿泊施設が供給過剰になる中で、自ら宿泊施設を開発・所有していくというのは、ビジネスとして非常に難しい。そこで、従来の開発・所有というビジネスモデルを転換して、施設の運営に特化する戦略に出ました。むしろ供給過剰の中で、成績の落ちた施設でも「星野リゾートが運営すれば利益が出ます」という事業にチャンスがあると考えました。
開発・所有から運営特化へ
この方針は社長に就任して、すぐ決めました。
米国のホテル業界を見ていましたから、いずれ外資系が得意の運営特化戦略で日本に進出してくると分かっていました。対抗するためには、我々も運営特化でいかないといけない。宿泊施設を所有してはいけない。
なぜなら自ら開発・所有するには借金をする必要があり、返済には早くても15年はかかるからです。それでは施設を四つ建てたら、人生が終わってしまう。つまりスピード感に欠けます。それでは、外資が来た時に勝てないと考えました。
優秀な人材がほしい!鍵は組織文化に
その転換に何が必要かといえば、人材とノウハウです。しかし、最初の5年間は人材獲得にすごく苦労しました。当時…
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星野佳路
星野リゾート代表
1960年、長野県生まれ。慶応大経済学部卒業後、米コーネル大ホテル経営大学院修士課程修了。91年に星野温泉(現・星野リゾート)代表。温泉旅館だった家業を「世界で通用するホテル会社」にするとの目標のもと、所有と運営を一体とする日本の観光産業でいち早く運営特化戦略をとり、大きく変貌、成長させた。