
弁護士に聞く「不動産業者の実態」(1)
スルガ銀行の不正融資発覚後、シェアハウス購入者から委託を受けた「被害弁護団」は、不正に関わった不動産業者に対して調査を行ってきた。弁護団の一員として複数の業者から事情を聴いた金裕介弁護士(36)に、業者の実態についてインタビューした。3回に分けて掲載する。【聞き手・経済プレミア編集部、今沢真】
――預金通帳や源泉徴収票の改ざんといった不正を、かなり多くの不動産業者が行ったのはなぜとお考えですか。
◆金裕介弁護士 2018年にスルガ銀行の不正融資が発覚し、最初はどういう問題があるのかを知るため不動産会社に話を聞きました。驚いたのは、改ざんや偽造をしたのに「不正」という認識が彼らにはなかったことです。不動産を買いたい人のための「必要悪」という感じでした。
「銀行も貸せるし、購入者も融資を受けられるし、自分たちも不動産を販売できる」という感覚で、「そこを突いてもあまり意味ないんじゃないですか」と言う業者すらいました。業界内のある意味「常識」なのかはわからないですが、感覚がマヒしているんだなと思いました。
特殊な銀行と業者の結びつき
――不動産業界では書類の改ざんや偽造はよくあることなのでしょうか。
◆我々は通常、不動産の査定を依頼することがあります。そうしたきちんとした業者と話をすると、今回の不正は「違う世界」といった印象があります。ただ業界内で、スルガ銀行と関連業者の良くないうわさはあったと聞きます。不動産業者一般というよりも、特殊な業者が特殊な銀行と結びついたのかなという感じです。
――投資不動産といった業界内でも一部の話ということで…
この記事は有料記事です。
残り827文字(全文1523文字)
今沢真
経済プレミア編集部
1983年毎日新聞入社。89年経済部。日銀キャップ、財研キャップ、民間企業キャップを歴任。2013年論説委員。15年経済プレミア創刊編集長。19年から同編集部。16年に出版した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機」など。16~18年度城西大非常勤講師。