
弁護士に聞く「不動産業者の実態」(3)
スルガ銀行の不動産向け不正融資に関与した不動産業者は、不動産の購入者と「被害弁護団」によるヒアリングや調査に、きちんと向き合ったのか。弁護団の事務局次長を務める金裕介弁護士に業者の実態を聞くインタビューの最終回は、業者の対応に話が及んだ。【聞き手・経済プレミア編集部、今沢真】
――スルガ銀行の不正融資に関与した不動産業者は50社ほどと言われています。事件発覚後、そうした業者に不動産購入者や弁護団が調査を始めたのですね。
◆金裕介弁護士 購入者に対して「不動産業者に連絡して、不正に関わる情報を引き出してほしい」と依頼しました。シェアハウスの場合は、売買が行われてからまだ1、2年というケースが多かったので、連絡はとれたところが多かったと思います。
ただ、業者から「担当者が辞めたから分からない」と言われたケースは多かったです。改ざんや偽造をしたのは特定の従業員だ、という言い逃れです。悪質と思われる業者で「夜逃げ」のような形でまったく連絡できなくなったところもありました。
「業務改善の指示」処分の軽さ
――不正に関与した業者13社に対して、国土交通省と東京都が「業務改善の指示」という行政処分をしています。行政処分として「免許取り消し」「業務停止」に次ぐ3ランク目の、比較的軽い処分です。
◆他の事案の処分を見ると、宅地建物取引士の資格のない人が、取引の重要事項の説明を行い業務停止を受けたケースがあります。そうした案件と比較すると、書類を改ざんして、本来融資を受けられない融資を引き出した今回の案件が「指示」というのは弁護士の感覚で言うと軽い処分…
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今沢真
経済プレミア編集部
1983年毎日新聞入社。89年経済部。日銀キャップ、財研キャップ、民間企業キャップを歴任。2013年論説委員。15年経済プレミア創刊編集長。19年から同編集部。16年に出版した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機」など。16~18年度城西大非常勤講師。