けいざい多面鏡

「脱ガソリン車」目標にトヨタ社長が危機感を抱く理由

今沢真・経済プレミア編集部
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オンラインで日本自動車工業会の会長として記者団の取材に応じるトヨタ自動車の豊田章男社長=ウェブ中継から
オンラインで日本自動車工業会の会長として記者団の取材に応じるトヨタ自動車の豊田章男社長=ウェブ中継から

 「2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロ」を掲げた政府は昨年12月、自動車業界に対し、ガソリン車から電動車への転換を求める目標を定めた。一方、豊田章男・トヨタ自動車社長は、電気自動車(EV)への急激な移行に強い懸念を表明した。「排出実質ゼロ」の目標設定は世界の潮流だが、自動車業界トップの懸念はどこにあるのか。豊田氏の発言を詳しく紹介する。

 自動車分野の具体的な政府目標は「30年代半ばに乗用車の新車販売を電動車100%にし、ガソリンだけで走る車をゼロにする」だ。電動車とは、EV▽ガソリンエンジンと電動モーターを併用するハイブリッド車▽家庭用電源で充電が可能で、より環境性能が高いプラグインハイブリッド車▽水素を燃料とする燃料電池車――を指す。EV化のハードルが高いトラックなど商用車は「今年夏までに検討を進める」とした。

 目標と現状を比べてみよう。19年の乗用車の国内新車販売台数は約430万台。うち電動車は、ハイブリッド車が147万台と約34%を占めるが、電気自動車とプラグインハイブリッド車は各2万台前後にすぎず、燃料電池車は685台にとどまる。一方、ガソリン車やディーゼル車は約65%にあたる279万台だった。

「国際競争力を失う恐れ」

 豊田氏の発言は、目標が公表される1週間余り前に、日本自動車工業会の会長として報道陣のオンライン取材に応じた際、質問に答えたものだ。

 豊田氏はまず「50年のカーボンニュートラル(排出実質ゼロ)を目指す菅義偉首相の方針に貢献するため、自工会として全力でチャレンジする」と述べ、政府の大方針は受け入れる考えを表明した。

 一方、ガソリン車ゼロ目標に対して…

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今沢真

経済プレミア編集部

1983年毎日新聞入社。89年経済部。日銀キャップ、財研キャップ、民間企業キャップを歴任。2013年論説委員。15年経済プレミア創刊編集長。19年から同編集部。16年に出版した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機」など。16~18年度城西大非常勤講師。