ニッポン金融ウラの裏

コロナに耐える経営者が激怒「東京都公社の案内状」

浪川攻・金融ジャーナリスト
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新型コロナウイルスに関するニュースが電光掲示板に流れる中、新宿・歌舞伎町を歩く人々=東京都新宿区で2021年1月6日、西夏生撮影
新型コロナウイルスに関するニュースが電光掲示板に流れる中、新宿・歌舞伎町を歩く人々=東京都新宿区で2021年1月6日、西夏生撮影

 新型コロナウイルス感染問題の深刻化に伴う経済活動の悪化によって、多くの企業が苦悩し、事業継続に向けて懸命の努力を続けている。そのさなかの昨年12月、東京都内で事業を営む中小・零細企業の経営者のもとに、事業意欲を失わせかねない案内状が送られてきた。

送り主は都中小企業振興公社

 送り主は東京都の外郭団体である東京都中小企業振興公社だ。封筒の上部には「公社支援事業のご案内」と記されている。突然、そのようなダイレクトメール(DM)を受け取ったある建設関係の経営者は、「新たな助成金かも」と思いながら開封し、案内状の文面を読んだ。途端に、言いようのない怒りで手が震えたという。文面にはこう記されていた。

 「新型コロナウイルス感染症の影響等により、事業譲渡等を検討している都内中小企業者様を対象に、国内譲受(買い手)事業者とのM&Aマッチング支援を行います。(中略)是非とも本事業のご活用を検討ください」

 案内状とともに、同公社が事業を外部委託した都内のM&A(企業の合併・買収)仲介業者のパンフレットが同封されていた。同様にDMを送り付けられてきた設計事務所の経営者が怒りの声でこう訴える。

 「我々は事業継続に向けて懸命に努力しているのに……。東京都は飲食店に時短などの制約を課す厳しい措置をコロナで打ち出している。厳しいから今のうちに会社を売却したらどうかというのか」

逆なでされた気持ちに

 2人の経営者はコロナの大嵐のなかで事業継続に向け精いっぱいの努力をしてきた。その最中に、公の団体の名前で事業売却を勧めるような文書が届き、思いを逆なでされたのだ。2人は自分のもとになぜこのようなDMが送られ…

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浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。