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緩い「緊急事態宣言」経済損失を昨年4月と比較

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
緊急事態宣言の発令について記者会見する菅義偉首相の映像を流す街頭ビジョン=東京都新宿区で2021年1月7日、宮武祐希撮影
緊急事態宣言の発令について記者会見する菅義偉首相の映像を流す街頭ビジョン=東京都新宿区で2021年1月7日、宮武祐希撮影

 政府は、新型コロナウイルスの感染拡大に対し、緊急事態宣言を再び発令した。期間は1月8日から2月7日まで。対象地域は東京都、神奈川、埼玉、千葉県の1都3県だが、大阪府、京都府、兵庫県の2府1県にも発令されそうで、さらに愛知県、岐阜県も加わる可能性がある。

前回の緊急事態宣言は9.9兆円の損失

 再びの緊急事態宣言に、最初の宣言を出した昨年4~5月の経済打撃が大きかったことを思い出す。2020年4~6月期の実質GDPは前期比年率でマイナス29.2%と大幅な下落だった。ただ、この数字は年率換算値なので、実際よりも約4倍ほど膨らんでいる。

 そこで筆者が実額で計算すると、4~6月期は前年同期に比べて実質GDPは14兆円落ちていた。この中には、外需の下落(マイナス4.7兆円)、官公需の押し上げ分(プラス0.8兆円)などが含まれている。それらを除いた民間内需の減少分は9.9兆円だった。1四半期で9.9兆円のマイナスは、過去に類を見ない落ち込みである。

前回よりインパクトは小さい

 前回の緊急事態宣言は、20年4月7日から5月25日までの49日間発令された。その中で47都道府県全体に発令されたのは4月16日から5月13日の28日間であった。

 一方で今回は、活動制限の内容も、酒類を提供する飲食店の営業時間が午後8時までになることが主になる。学校の一斉休校は行わず、イベントの規制なども緩やかなものになっている。

 そうした適用範囲の違いを考慮して計算すると、1都3県だけの場合、今回の経済損失は、前回の約半分(43%)になりそうだ。この数字は、関西の2府1県が加わると、6割(59%)にまで広がり、愛…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。