海外特派員リポート

「EU離脱」でも歓声なき英ドーバー海峡で考えたこと

横山三加子・毎日新聞欧州総局特派員(ロンドン)
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欧州大陸に向かうトラックをチェックする英国の警察官ら=英南東部ドーバー港で2021年1月1日、横山三加子撮影
欧州大陸に向かうトラックをチェックする英国の警察官ら=英南東部ドーバー港で2021年1月1日、横山三加子撮影

 静かな別れだった。2020年12月31日午後11時(日本時間21年1月1日午前8時)、欧州連合(EU)に事実上とどまる移行期間を終えた英国は、名実ともにEUを離脱した。

 この日、私は英国と欧州大陸を結ぶ要所、英南東部ドーバー港で離脱完了の瞬間を見届けた。港周辺の民家からは歓喜もなければ嘆く声も聞こえなかった。

 英国とEUが自由貿易協定(FTA)などの締結で合意したのは1週間前の12月24日。双方の関係性を強化しようという通常の通商交渉も、利害のぶつかり合いでもめるのが常だが、英EUは関係性を薄めるための交渉で、それゆえの複雑さがあったように思う。

 私はロンドンで、この間の交渉を取材した。最後まで残った論点のひとつが「公正な競争条件」だった。ルール面の整合性を図ることを目指すもので、英語では同じ土俵という意味の「レベル・プレーイング・フィールド」と呼ばれる。

「内政干渉と紙一重」

 通商交渉に詳しい「オウルズコンサルティンググループ」の羽生田慶介代表は「最近増えている先進国同士のFTA交渉では、国ごとに異なる微妙な規制の違いが大きな課題になっている。英EUで交渉の中心になったのは予想の範ちゅうだった」と話す。

 関税の撤廃・削減が進んでも、国家補助金や安全・環境基準など各国独自のルールが貿易障壁になるという認識は強まっている。だが、各国には守りたい産業や呼び込みたい投資があり、自国に有利なルール形成をしなければ経済的敗者になりかねない。ルール面の整合性を図る意義では一致しても、妥協点を見つけるのが難しい。

 しかも、英EUはこれまで両者がひとつのルールでやってきたという特異なケースだ。EUは…

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横山三加子

毎日新聞欧州総局特派員(ロンドン)

1981年、埼玉県生まれ。法政大学社会学部卒。2004年、毎日新聞社に入社。岡山支局、大阪本社経済部を経て13年から東京本社経済部。電機・通信業界、経済産業省や財務省、財界などを担当。19年10月から現職。