経済記者「一線リポート」

在宅勤務でも怒鳴られる「示談交渉」の実態とは

三上剛輝・毎日新聞経済部記者
  • 文字
  • 印刷
在宅勤務で自動車事故の示談交渉に当たる東京海上日動火災保険の三浦薫さん=東京都内で2020年11月26日、三上剛輝撮影
在宅勤務で自動車事故の示談交渉に当たる東京海上日動火災保険の三浦薫さん=東京都内で2020年11月26日、三上剛輝撮影

 新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言の再発令によってテレワークの徹底が改めて求められ、これまで在宅では難しいと考えられていた業務も例外ではなくなりつつある。トラブルに発展しやすい自動車事故の示談交渉もそうした業務の一つだったが、2020年の緊急事態宣言を機に大手損害保険各社は在宅勤務に踏み切った。取材をすると、現場の苦労や工夫が浮かび上がった。

いらだつ当事者

 「お前、今からこっち来いや!」。ある損保で示談交渉を担当したことがある30代男性は、電話口でこうすごまれた経験を明かす。提示した保険金の支払額に相手が納得せず、理解を得ようとしている最中だった。事故から始まる示談交渉は当事者がいらだっていることも多く、こうしたことは一度や二度ではなかったという。この男性は多い時には300ほどの案件を同時に抱えたこともあり、「精神的にきつい時もあった」と振り返る。

 一般的に自動車保険を扱う大手損保では、事故の連絡を24時間体制のコールセンターでまず受け付け、保険金支払い部署に振り分ける。その部署で事故の当事者と主に電話でやり取りして過失割合などを詰め、保険金の額を決めるのだが、相手方に納得してもらわないと示談は成立しない。

 目撃者がいたり、ドライブレコーダーで記録されていたりすれば交渉は比較的円滑に進む。だが有力な証拠がなく、双方の主張が食い違えば交渉は長期化し、場合によっては訴訟に発展しかねない。最近では交渉の不満をネット交流サービス(SNS)に書き込まれ、交渉内容を拡散された事例もあった。

トイレから電話も

 「会社のイメージに直結するシビアな仕事」(業界関係者)だからこそ、トラ…

この記事は有料記事です。

残り1316文字(全文2012文字)

三上剛輝

毎日新聞経済部記者

 1982年名古屋市生まれ。名古屋大経済学部卒。中部地方の経済紙記者を経て、2009年毎日新聞社入社。岐阜支局、中部報道センターを経て、19年10月から東京経済部。主に保険業界や信託銀行、株価の動向を取材している。