
新型コロナウイルスのワクチン接種が昨年12月から米国で始まりました。接種開始日には多くの国民が一筋の希望を抱き、今年1月12日までに約930万人が1回目の接種を終えています。
ところが私が暮らすロサンゼルス郡などでは、医療従事者の「ワクチン接種拒否」が注目されています。米国内で最も感染者が集中し、「6分に1人がコロナで死亡」とも伝えられる地域であるにもかかわらずです。ロサンゼルス・タイムズ紙(12月31日付)によると、ロサンゼルス郡の各病院でコロナ治療に当たる医療従事者の約20~40%が、ワクチンの接種を拒んでいるといいます。
治療の最前線におり、最優先の接種対象者である医療従事者の間でこれだけ拒否反応があるのであれば、一般社会への普及に楽観的にはなれません。ワクチンの必要性を理解しているはずの医師や看護師らによるこうした反応は、一般の人々のワクチンへの考えにも影響するでしょう。
一般社会にも疑念や不安
もともと米国内では人種や性別を問わず、新型コロナワクチンに懐疑的な人が少なくありません。AP通信の世論調査によると、ワクチン接種を希望している大人は47%にとどまり、27%は「わからない」、26%は「接種拒否」と答えています(調査期間:12月3~7日)。
背景にあるのはワクチンの安全性への疑念です。短期間で開発され、緊急措置でスピード承認されたことへの不安と言ってもよいでしょう。これだけならうなずける部分はありますが、今回、私が指摘したいのは、一般の人々が抱くワクチンへの疑念や不安を、必要以上にあおる勢力が出てきたことです。
それは、過激な主張を繰り返す一部の保守層と、コロ…
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