藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

イスラエル北部「ハイファ」美しい景色と宗教の混交

藻谷浩介・地域エコノミスト
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ハイファの町の丘の上から地中海を遠望する(写真は筆者撮影)
ハイファの町の丘の上から地中海を遠望する(写真は筆者撮影)

イスラエル編(2)

 南北に細長いイスラエルの人口は、南北200キロ余りの北半分に集まっている。高速道路なら2時間少々、1時間に2~4本運行している列車で3時間半というサイズだ。その中でもさらに北の方に位置する大都市ハイファへは、テルアビブから列車で片道1時間15分、往復1500円程度で行ける。テルアビブに連泊し、中日に訪問した。

銃を手に列車で眠りこける兵士

 2019年5月初旬の日曜日。地中海沿いを北上する列車は満席に近かった。左手は晴天の海辺だが、電源とWi-Fi完備で清潔な車内とは対照的に、窓は汚れており、残念ながら写真は奇麗に撮れない。向かいの席では、日曜日に実家に帰る途中なのだろうか、若い兵士が眠りこけていた。イスラエルでは、ユダヤ教徒の男性は18歳から3年間、女性は2年間徴兵されることになっている。

 兵士が膝の上に置いた小銃の銃口は、終点に着くまでずっと、筆者の足に向いていた。「何かの間違いで弾丸が出てきたら?」と、落ち着かなさを覚えたが、昨晩の駅の兵士と同じで、周囲の客は誰も気になどしていない。

 多くの外国では、銃を構えた兵士が街頭で勤務していること自体は珍しくもない。だが目つき鋭く周囲を警戒しているのが常で、撮影はもちろん、眺めること自体もしない方が無難だ。それに対して、勤務時間外に銃を持って1時間以上も爆睡する兵士を見たのは、イスラエルが初めてである。これはつまり、いくら油断しても銃を奪い取られる危険がない、それだけ安全だ、ということなのだろう。戦争状態にあるのとは真逆の現象なのだ。

 イスラエルでは兵役後に世界を旅行する若者が多いのだが、彼らが日本のラッシ…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。