産業医の現場カルテ

45歳男性運転手の「高血糖」産業医が面談急いだワケ

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
  • 文字
  • 印刷
 
 

 松井さん(仮名、45歳男性)は、従業員数約150人の運送会社で長距離トラックの運転手を務めています。この会社の産業医である私は従業員全員の健康診断結果を確認していたとき、松井さんの結果に目が留まり、急いで面談をすることにしました。

気づきにくい糖尿病の症状

 松井さんは、随時血糖値が300㎎/dlを超え、高血糖の状況でした。この値が200㎎/dlを超える場合、糖尿病の疑いがあります。治療が必要なのは当然ですが、高血糖の状況が続くと意識障害が起こる場合があり、運転中であれば大きな事故につながりかねません。私は何より業務上の配慮がすぐに求められると考えました。

 ただ、糖尿病は症状に気づきにくい疾患です。松井さんは面談で「体調は悪くありませんが、最近トイレに行くことが多く、運転中の休憩回数が増えています。のどが渇くので水や缶コーヒーをよく飲みますが、加齢のせいだと思っていました」といいます。

 トイレが近かったり、のどが渇きやすかったりするのは糖尿病の症状です。他にも、疲労を感じやすくなったり、体中にかゆみを伴ったりするケースもあります。糖尿病は悪化すると、腎不全、しびれや痛みを伴う神経障害、視力が低下する網膜症など重い合併症を引き起こす場合があります。また発症すると、生活習慣に配慮しながら生涯付き…

この記事は有料記事です。

残り1269文字(全文1822文字)

佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。