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コロナ打撃のリアル消費「デジタルシフト」で生き残る

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
緊急事態宣言をうけて閑散とする新宿・歌舞伎町の飲食店街=2021年1月8日、滝川大貴撮影
緊急事態宣言をうけて閑散とする新宿・歌舞伎町の飲食店街=2021年1月8日、滝川大貴撮影

 コロナ禍の企業経営における教訓の一つは、特定の需要に大きく依存すると、万一、その需要がストップしたときに困るということではないか。

 例えば、訪日外国人の需要がほとんど停止したことで、観光、飲食、小売り分野は大打撃を被った。GoToキャンペーンは、訪日外国人の減少を国内旅行者の増加で何とか穴埋めしようとしたものだ。どのようなビジネスでも、事業のポートフォリオをうまく構成して、思わぬ需要変動に備えることが今後の課題となるだろう。

出前サービスは前年比2.3倍に

 事業ポートフォリオを拡大させる道筋として、まず考えられるのは、インターネットによる取引を増やすことだ。コロナ禍で対面販売やサービス取引は大きく制約された。その中で、インターネット経由の消費支出は、2020年3月から急激に伸びている。

 総務省の「家計消費状況調査」によると、ネットショッピングは高い伸び率を記録している。直近の20年11月の前年同月比は33.2%増で、旅行や観劇のチケットなどのサービス取引を除くと、同53.3%増と跳ね上がる。なかでも、出前(外食の宅配サービス)は同130%増(2.3倍)、電子書籍は同100%増(2.0倍)と成長が著しい。

 経済産業省によると、インターネットによるB to Cの市場規模は、19年は19.4兆円に達し、過去10年一貫して成長し続けている。前述の「家計消費状況調査」から推察すると、コロナ禍に見舞われた20年も伸びており、21年もさらに伸びていくと予想できる。

 コロナ禍では、店舗でのリアルの世界の取引が縮小して、ネット取引へのシフトが大きく進んだ。事業者によっては実店舗の売り上げが落…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。