
米国のバイデン新大統領が1月20日、大統領就任式で「全ての米国人の大統領になる」と宣言し、国民の団結を訴えました。トランプ前大統領の4年間やコロナ禍であらわになった米国社会の「分断」を念頭に置いたもので、多くの国民が新たな光を見ました。
一方、就任式にはものものしさもありました。連邦議会議員の妻として出席した私の友人は、今回の就任式を「神聖な静寂さに包まれたひとときだった」と表現しましたが、それは危険と隣り合わせの静寂さだったとも言えます。
現実問題として残る「分断」
これまでの就任式では、会場となる連邦議会議事堂の周辺に全国から多くの人々が集まり、歓声が飛び交っていました。ところが今回は、史上最大規模の2万5000人の州兵が動員され、一般人が会場周辺で就任式を見守ることも厳しく制限されました。
異例の厳戒態勢となった発端は1月6日、連邦議会議事堂に暴徒が集団で乱入した事件です。トランプ氏の大統領選敗北に納得せず、選挙不正を訴える支持者らが議事堂前を占拠し、暴徒化した一部が議事堂内になだれ込みました。米国の民主主義そのものへの攻撃であり、大きな社会不安を引き起こしています。
この事件を受け、共和党内では党幹部も含めた「トランプ離れ」が始まりました。トランプ氏を擁護し続けてきた党上院トップのミッチ・マコネル氏も、「トランプ氏が暴徒を扇動した」と非難しています。
一方、CNNと世論調査会社SSRSの調べによると、「バイデン氏は大統領選の正当な勝者である」と回答した共和党支持者は19%にとどまりました(調査期間1月9~14日、サンプル数1003)。国民の間では、「分断」が現実問題として続いていることがうかがえます。
約47%がトランプ氏に投票した事実
昨年11月の大統領選で、7400万人以上(得票率は約47%)がトランプ氏に投票したことは事実です。そして、すべての人が過激な考えを持っているわけではありません。
私のママ友(元小学校教師)でもあるトランプ支持者の女性は、就任式の後、「新政権誕生で自由は崩壊する。その危険性に多くの米国人が気付いてほしい。自由のために戦う余地はまだある」とフェイスブックに投稿しました。
彼女は、ワクチン接種など個人の自由がからむ領域に…
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