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中小企業の「M&Aアドバイザー」利益相反問題とは

浪川攻・金融ジャーナリスト
 
 

 中小企業の経営者の高齢化や後継者難を背景に、事業承継、事業譲渡という問題が話題になっている。おりしも菅義偉首相は、「生産性の低さ」の観点から中小企業の構造改革を政府の成長戦略会議のテーマに掲げた。そうしたなか、政府・与党内で中小企業の事業承継の手法の一つであるM&A(企業の合併・買収)にからみ、仲介業者のビジネスの在り方に関心が高まりつつある。

 M&Aは事業の再編や多角化といった企業戦略を具体化する手法として重要視されてきた。そのなかで、M&Aを仲介する業者の役割は大きい。企業の売り手側、買い手側が別々の仲介会社とアドバイザリー契約を結ぶ。仲介会社は合理的な買収条件を算出し、双方の意向を結びつける交渉の裏方役になる。

 売り手側は少しでも高額で売却したいし、買い手側は逆に少しでも低額で買収したい。仲介会社は相反する意向をそれぞれの代理人として調整する。

同一の仲介会社がアドバイザーに

 一方、中小企業を対象とするM&Aの仲介業には、同一の仲介会社が売り手側、買い手側双方のアドバイザーになるビジネスモデルがある。双方の代理人となるため、案件が成立した場合、両方の企業から成功報酬を受け取るわけだ。

 中小企業の場合、譲渡価格(裏返すと買収価格)がそれほど大きな額にならないことも多い。売り手側、買い手側の一方のアドバイザーでは報酬金額が低くなり、仲介業が事業として成立しにくい面があるようだ。だが、政府・与党の一部で「売り手側、買い手側の両方の立場に立つことで、利益相反となりかねない」との声が上がり始めている。

 大企業の場合は売り手側、買い手側それぞれが別々のアドバイザーを選任する。仮に…

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金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。