藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

エルサレム「シェルター兼用駅」で考えた安全保障

藻谷浩介・地域エコノミスト
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エルサレムのイサク・ナボン駅は地下80メートルに新設された。地上へは長いエスカレーターをいくつも乗り継ぐ(写真は筆者撮影)
エルサレムのイサク・ナボン駅は地下80メートルに新設された。地上へは長いエスカレーターをいくつも乗り継ぐ(写真は筆者撮影)

イスラエル編(4)

 テルアビブから70キロも離れていないガザ地区周辺で大規模な武力衝突が起きていた当日、私が歩いたテルアビブは不自然なまでに静穏だった。ユダヤ教とイスラム教が対峙(たいじ)し、そこにキリスト教も絡む聖都エルサレムまで行けば、何かもう少し生々しいものが見えてくるのだろうか。朝のサイクリングから戻った筆者は、高速列車でエルサレムへ移動した。

高速列車でテルアビブからエルサレムへ

 海岸沿いのテルアビブから、標高が700~800メートルの丘陵地帯にあるエルサレムまでは東南に60キロ。この旅行(2019年5月)の直前に、長大トンネルを連ねた鉄道新線が開業し、最高速度160キロの列車が国際空港駅経由で、30分おきに片道35分で走るようになった。

 日本では北陸新幹線が、高崎から軽井沢まで標高差800メートル以上の30パーミル(水平に1000メートル進む間に30メートル上がる)の急勾配を16分で駆け上るが、こちらの新線も同じような構造で、トンネル内を高速で走るので、坂を上っていることに気付かない。

 昨日乗ったハイファ行きの区間はまだ非電化だった。イスラエルの鉄道は、機関車で客車を挟む欧州式のプッシュプル運転なので、電化されているテルアビブ-エルサレム間も客車は共通だ。運賃は片道800円程度でガラガラに空いていた。終点イサク・ナボン駅は、エルサレムの高速バスターミナルの直下にあり、市街を東西に結ぶLRT(次世代型路面電車)にも直結している。

 直下と言ったのは、ホームが地下80メートルもの深さにあるためだ。筆者の旅は予習をしないのが身上なので(見聞したものについて情報を調べる…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。