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攻撃型上司も「部下の気持ち」になる“空の椅子”技法

舟木彩乃・産業心理コンサルタント・カウンセラー
 
 

 石田さん(仮名、30代後半女性)は、食品メーカーの商品企画部マーケティング課で課長を務めています。商品企画部には、市場調査やデータ解析を行うマーケティング課(8人)と、その分析結果を参考に新商品やサービスを企画する開発課(10人)があります。

 石田さんは理系の大学院出身で統計処理に詳しく、英語も堪能で海外の文献なども読むことができる優秀な社員です。彼女の活躍で、商品企画部はヒット商品を作り出すことに成功し、その功績が認められて半年前に課長に抜てきされました。

部下の対応に苦慮

 てきぱきと仕事をこなす石田さんは、悪気はないのですが、ミーティングなどの場で、仕事が遅れている部下に対して「こんな簡単なことがどうして終わっていないの?」などと、きつい言い方をすることがあり、同僚にたしなめられたことがありました。

 そんな石田さんが、少し対応に苦慮していたのが、配属3年目のAさん(20代後半、男性)です。

 彼は仕事が少し遅いうえにミスが多く、指摘すると黙り込んだり、報告を怠ったりするようなところがありました。ある日の商品企画部全体の会議で、担当する商品をリニューアルする話題が出たとき、開発課からの質問にほとんど回答できませんでした。会議後、石田さんが「あれくらいの質問には対応してくださいね」と言うと、Aさんは「すみません……」と言ったきり黙り込み、以後ますます彼女を避けるようになったそうです。

1人2役で相手の立場を考える

 石田さんはあとで、ちょっと言い過ぎたかとも思ったそうですが、今後、Aさんにどのように対応したらいいかと、筆者に相談にきました。

 話を聞くと、彼女は「攻撃タイプ」(…

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産業心理コンサルタント・カウンセラー

 筑波大学大学院博士課程修了(ヒューマン・ケア科学博士)。一般企業の人事部などを経て、現在メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー企業)副社長。金融庁職員のメンタルヘルス対策にも従事する。国家資格として公認心理師、精神保健福祉士、第1種衛生管理者、キャリアコンサルタントなど保有。著書に「『首尾一貫感覚』で心を強くする」(小学館新書)。