産業医の現場カルテ

「健診で異常値」45歳女性に産業医が助言した中身

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 産業医である私は昨年8月、スーパーでレジ業務や品出しをするパートの村上さん(仮名、45歳女性)から相談を受けました。村上さんは「先日、健康診断を受けたところ、その結果で受診を促される項目があったのですが、新型コロナウイルスの感染対策でただでさえ職場の緊張感が高まっている中、病院に行くのは気が引けます」といいます。

貧血で立ち仕事は危険

 健康診断の結果を見せてもらったところ、体中に酸素を運ぶ赤血球の主成分、ヘモグロビンの値が7g/dl台でした。成人女性の正常値は12~15g/dlとされており、この値が少なくなると貧血と診断されます。村上さんの値は、より症状が重い、高度の貧血(7g/dl以下)の一歩手前でした。

 村上さんは基本的に立ち仕事をしています。貧血が原因で、ふらつきや動悸(どうき)が起こる可能性があり、安全に業務ができないと考えました。そこで私は、村上さんの同意を得て、上司と人事担当者に状況を知らせ、立ち仕事の時間を制限して、症状が改善するまでは座ってできる事務作業などの担当に変更するよう依頼しました。

 一方、村上さんには高度の貧血による生活への影響と、貧血の原因が胃潰瘍や子宮筋腫、悪性腫瘍などの病気の症状である可能性について話しました。村上さんは、軽い運動で息切れすることを自覚してい…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。