ニッポン金融ウラの裏

株価3万円台の陰で「証券担保ローン」60代男性の悲劇

浪川攻・金融ジャーナリスト
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東京証券取引所ビル内のマーケットセンター=東京都中央区で幾島健太郎撮影
東京証券取引所ビル内のマーケットセンター=東京都中央区で幾島健太郎撮影

 証券会社が最近、個人客向け商品のラインナップに積極的に取り入れているのが証券担保ローンである。客が保有する株式、投資信託などを担保にとり、お金を借りてもらう。多くの場合「お金の使い道は自由」だが、証券投資に利用されることが多い。手持ち資金を大きく超え「レバレッジ(てこの原理)」を利かせた投資が可能になる。

 いまは株式相場が上昇局面のため、少ない手持ち資金で多額の投資ができる証券担保ローンのメリットが注目されやすい。だが、その風潮には強い疑問を感じる。一部で証券担保ローン利用者が追加担保を迫られる事態が発生しているからだ。場合によっては、証券担保ローンを取り扱う証券会社などの販売姿勢が問われることにもなりそうだ。

証券会社から勧誘され

 事例を一つ紹介する。約1年前に60歳代後半の男性が手持ち資金を運用しようと証券会社に相談した。すると、窓口で対応した社員から複数の投資信託の購入を勧誘された。手持ち資金で足りない分は証券担保ローンを利用するよう勧められた。

 男性は、ローンを利用して勧められた複数の投信商品を購入した。購入した投資信託のなかには、新興国通貨建て社債のほか、市場価格が下がるとリターンが増える仕組みの投資信託が含まれていた。逆に市場価格が上がるとリターンは減り、元本毀損(きそん)のリスクがある商品だ。

 その後、購入した商品の評価損が膨らみ、「アラーム」と呼ばれる追加担保の催促状が証券会社から届くようになった。男性は追加担保にする株式や債券を保有しておらず、現金で補塡(ほてん)する事態に陥っている。男性の家族は弁護士に対応を相談している。弁護士は証券会社の担当者に話を聞…

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浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。