冨山和彦の「破壊王になれ!」

森発言が「無意識の偏見」との闘いに果たした皮肉な役割

冨山和彦・経営共創基盤グループ会長
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東京五輪・パラリンピック組織委の評議員会と理事会の合同懇談会で会長辞任を表明し、厳しい表情であいさつを続ける森喜朗氏=東京都中央区で2020年2月12日(代表撮影)
東京五輪・パラリンピック組織委の評議員会と理事会の合同懇談会で会長辞任を表明し、厳しい表情であいさつを続ける森喜朗氏=東京都中央区で2020年2月12日(代表撮影)

 ここしばらく、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長だった森喜朗氏の女性蔑視発言に端を発した騒動で、メディアもSNS(ネット交流サービス)もかなり盛り上がった。私は本件について、さめた部分と熱い部分の両面がある。

 さめた部分を先に片付けると、オリンピックは過去、政治性からなかなか自由になれなかった歴史がある。加えて1984年、その前のモスクワ大会を米国や日本がボイコットしたことに対して報復的に、そしてまさに政治的にソ連や東欧諸国が不参加を決めたロサンゼルス大会から、事実上のプロ解禁の流れや商業イベント性が強まった。五輪憲章の崇高さと、政治性・商業性のはざまで行われるアンビバレントなイベントなのである。

 私はその現実、特に商業化を否定的に捉えているわけではなく、オリンピックが商業的にお金の集まるイベントであるが故に、より五輪憲章の理想に近い意義を持っているパラリンピックを大きな規模で開催できることは素晴らしいと思っている。

 ただ、この巨大商業イベントの現実に鑑みて、本件を五輪憲章に引っ掛けてうんぬんする議論には、あまり気乗りしなかった。

「一発レッドカード」の時代

 むしろここで提起された「熱い」問題は、より普遍的な価値に関わる問題であり、およそ公的な立場にある人間、指導的な立場にある人間が公の場でこのような発言をしたら、…

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冨山和彦

経営共創基盤グループ会長

 1960年生まれ。東大法学部卒。在学中に司法試験に合格。米スタンフォード大経営学修士(MBA)。ボストンコンサルティンググループなどを経て、政府系企業再生ファンドの産業再生機構の最高執行責任者(COO)に就任し、カネボウなどを再建。2007年、企業の経営改革や成長支援を手がける経営共創基盤(IGPI)を設立し最高経営責任者(CEO)就任。2020年10月よりIGPIグループ会長。日本共創プラットフォーム(JPiX)代表取締役社長。