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中国版紅白歌合戦「春晩」が映した最先端技術のスゴさ

趙瑋琳・伊藤忠総研主任研究員
春節休暇中、大勢の市民でにぎわう北京市内の観光地「北海公園」=2021年2月15日、小倉祥徳撮影
春節休暇中、大勢の市民でにぎわう北京市内の観光地「北海公園」=2021年2月15日、小倉祥徳撮影

 中国では2月11日から旧正月が始まり、丑(うし)年に入った。大みそかの夜には中国版紅白とも呼ばれる「春節聯歓晩会(春晩)」が生放送され、中国メディアによると、国内外で10億人超の視聴者を楽しませたという。

 「春晩」は1983年からの恒例番組だ。近年はその年の流行や出来事だけでなく、5G(第5世代通信規格)やAR(拡張現実)などの最先端技術を番組に取り入れており、中国の最新動向を知ることができる。

 筆者は今年の春晩で、観客のマスク、お年玉キャンペーン、ロボットの三つが気になった。

「メード・イン・チャイナ」をアピール

 中国では新型コロナウイルスの感染が抑えられているとはいえ、大規模イベントではマスクの着用が推奨されている。春晩ではスタジオの観客らがカラフルで機能的なマスクを着用。華やかな彩りで春節のお祝い気分が盛り上がり、話題を呼んだ。

 マスクを提供したのは意外なメーカーだった。昨年、45万円の格安EV(電気自動車)を販売して注目された「上海GM五菱汽車」の子会社だ。同社はマスクの製造過程をネットで公開し、自社のブランド力の向上だけでなく、デザインを含むメード・イン・チャイナの実力を大いにアピールした。

 続いて「お年玉」だ。近年、春晩の視聴者は番組を見ながら、スポンサー企業のお年玉をゲットするのが楽しみの一つとして定着している。

 2015年にはSNS大手の「テンセント」が決済アプリのウィーチャットペイの普及促進のため、春晩と連携し、視聴者にお年玉を配るキャンペーンを手掛けて大成功を収めた。

 以来、中国のネット御三家BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)のうち、EC(電子商取引)最大手の…

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伊藤忠総研主任研究員

 趙瑋琳(ちょう・いーりん)。1979年、中国瀋陽市生まれ。2002年に来日。08年東工大院社会理工学研究科修了、博士号取得。早大商学学術院総合研究所、富士通総研を経て19年9月から現職。専門は中国経済、デジタルイノベーションと社会・経済への影響など。プラットフォーマーやテックベンチャーなど先端企業に詳しい。早大商学部非常勤講師も務め、論文執筆・講演多数。近著に「チャイナテック 中国デジタル革命の衝撃」(東洋経済新報社)。