
現代貨幣理論(MMT)を考える(2)
現代貨幣理論(MMT)は米ニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授らが提唱した考え方で、「自国通貨建てで借金できる国は、過度のインフレ(物価上昇)にならない限り、どれだけ借金が膨れ上がっても問題ない」という考えだ。
これに対し、世界の主要な財政・金融当局者は総じて否定的な見解を表明している。
「MMTは間違っている。既にいくつもの新興国が経験したようにハイパーインフレを引き起こす」(サマーズ元米財務長官)
「MMTは万能薬ではない。魅力的な理論ではあるが、実際に金利上昇が始まれば財政破綻のわなにはまる」(ラガルド・前国際通貨基金専務理事)
本当に「いくらでも国債を発行できる」のであれば、国民は税金を支払う必要すらないだろう。何の負担もなしに、サービスだけを受けられる夢のような社会が実現できるはずだ。
「デフレ脱却に有効」
政府が国債の増発を続ければ国の信用力が低下し、金利や物価の上昇を招く恐れが高い。それにはどう対処するのか。
こうした疑問をぶつけるため、政界で最も早くからMMTを取り上げてきた西田昌司参院議員(自民党)に話を聞きに行った。すると、こんな話が始まった。
「誤解がある。MMTは負担とサービスの原則を無視するような話ではない。当然、無税国家などという話ではない」
どういうことなのか。そもそも西田氏がMMTを主張するのは、日本がデフレから脱却し、長期低迷状態から抜け出すため、この理論が有効と考えたためだという。まずは、その説明を聞いてみよう。
日本が長年、デフレから脱却できないのは、民間需要が落ち込み「供給過剰」の状態が…
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赤間清広
毎日新聞経済部記者
1974年、仙台市生まれ。宮城県の地元紙記者を経て2004年に毎日新聞社に入社。気仙沼通信部、仙台支局を経て06年から東京本社経済部。16年4月に中国総局(北京)特派員となり、20年秋に帰国。現在は霞が関を拠点に、面白い経済ニュースを発掘中。新著に「中国 異形のハイテク国家」(毎日新聞出版)