MaaSが創る都市と地方の近未来

コロナ禍の伊豆に「春風」吹かせるアートの力

森田創・東急MaaS戦略課長、ノンフィクション作家
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伊豆急行の伊豆稲取駅に飾られたスプレーアート
伊豆急行の伊豆稲取駅に飾られたスプレーアート

 伊豆急行の電車が静岡県東伊豆町の伊豆稲取駅に入ると、原色系のド派手な看板が目に飛び込んでくる。例年、2月は河津桜の観光客で満杯になるはずの車内だが、緊急事態宣言下とあって人影はまばらだ。しかし、乗客は思わず立ち上がり、窓をあけてのぞき込む。奇抜な看板には、そうしたくなるほどの何かが宿っている。

 その看板は、人気テレビ番組「プレバト」の企画で、腕に自信のある芸能人たちが作り上げたスプレーアートだ。伊豆稲取駅に7枚、河津駅と伊豆急下田駅にも2枚ずつ、合計11枚の「芸術作品」ができあがった。

 きっかけは昨年秋にさかのぼる。伊豆急行の社員が、番組のホームページに「スプレーアートを書かせてくれるシャッター商店街」の募集告知を偶然見つけた。コロナ下でめっきりと人の減った伊豆を元気づけようと、「駅の構内看板でもいいですか」と問い合わせたのが、すべての始まりだった。番組側もOKし、すべてのプロセスは秘密裏に進んだ。1月中旬のオンエア当日まで、看板の正体がばれないように覆いが施されるなど、細心の注意と情報管理が徹底された。

 番組の反響は大きく、オンエア直後には伊豆急に問い合せが殺到した。伊豆稲取駅では、看板を見にくる地元住民で、数日間で350枚の入場券が売れたという。お金をかけなくても、人を呼びこみ、伊豆を元気づけることのできる何よりの証拠だ。

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森田創

東急MaaS戦略課長、ノンフィクション作家

 1974年神奈川県生まれ。99年、東京急行電鉄株式会社入社。ミュージカル劇場「東急シアターオーブ」の開業責任者、広報課長を経て、2018年から現職。日本初の観光型MaaS(次世代移動サービス)「Izuko」を伊豆半島で立ち上げた経緯を記した「MaaS戦記」を20年夏に刊行したほか、「洲崎球場のポール際」(第25回ミズノスポーツライター賞最優秀賞)「紀元2600年のテレビドラマ」の著作も。