藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

エルサレム「聖墳墓教会」で悟った欧州世界の成り立ち

藻谷浩介・地域エコノミスト
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聖墳墓教会の中にあるキリストの墓所(写真は筆者撮影)
聖墳墓教会の中にあるキリストの墓所(写真は筆者撮影)

イスラエル編(7)

 エルサレム旧市街を一回りして、北西側の新門から出てきたのは夕方6時前だった。最後の方で、南西のアルメニア人地区と北西のキリスト教徒地区の間にある、ダビデの塔の前を通る。エルサレムを守ってきた城塞(じょうさい)であり、嘆きの壁の上にあったユダヤ神殿と対を成す施設だが、午後4時閉門なので入れなかった。

物価は高いが食べ物はおいしい

 新門から旧市街を出た筆者は、LRT(次世代型路面電車)で西に、ホテルまで戻った。昼過ぎに、近くのマハネ・イェフダ市場を歩いた際に目星をつけていた、若いユダヤ人が切り回す地ビール屋で、夕食にクラフトビール2杯とサラダなどをいただく。食料安保に熱心なイスラエルでは自国産の農産物が多く、そのせいか物価は高いのだが食べ物の味はおいしい。

 筆者のテーブルの向かいは干し果物屋だったが、まったく客が来ない。ふと目が合ったパレスチナ人の店主が、大ぶりのなつめやしの半割りにクルミやアーモンドを刺して、「食べてみろ」と差し出した。小麦味の濃い地ビールに劇的に合う。ワインにも合うだろう。土産に買って帰って家族からも絶賛だったのだが、勘定は夕食とビールが4700円もしたのに、なつめやしとナッツは170円だった。店主の生計は立っているのだろうか。

 その日は早寝した筆者は、翌朝5時起きで荷物をまとめてから、6時半にホテルを出た。今日は帰国日だが、エルサレム駅から空港へは列車で25分なので、11時に乗れば問題ない。そこで10時終了の朝食をいただく前にもう一度、旧市街を回ってこようと算段したのだ。

キリスト教諸宗派が管理する聖墳墓教会

 再び新門から入って、イ…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。