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「全員が女将さん」星野代表が導入したマルチタスク

星野佳路・星野リゾート代表
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星野リゾートでは、社員がフロント、調理、食事提供、客室清掃の「マルチタスク」をこなす=同社提供
星野リゾートでは、社員がフロント、調理、食事提供、客室清掃の「マルチタスク」をこなす=同社提供

 星野リゾートの各施設では、社員がフロント、調理、食事提供、客室清掃をすべてこなす「マルチタスク」で働いています。これは、調理場や仲居さんなど、業務ごとに別の人が担当する日本の旅館・ホテル業界では、極めて異例な働き方です。現場の反発を押し切り、星野さんがマルチタスクを採用した理由とは。

星野佳路の家業のメソッド

 かつて、星野リゾートの社員は平均で1日14時間も会社にいました。しかし、給料は8~9時間分ほど。それなのに誰も文句を言わない。なぜかと言えば、実際に仕事をしているのは5時間前後だったから。会社にはいるが、仕事をしていない「手待ち時間」が多かったのです。

 ホテルの中で行われている労働量を業務ごとに分析すると、時間帯によって大きなばらつきがあります。午前と夕方には、チェックインとチェックアウトの大きな山ができ、昼間は客室清掃の業務が多くなる。一方、調理と食事提供は、朝食と夕食の時間帯が忙しい。

 調理と食事提供では通常、昼間に手待ち時間が生じてしまうため、伝統的な旅館では朝6時から午前11時ごろまで働き、いったん帰宅して、夕方にまた出勤してもらうという「中抜けシフト」が行われています。しかし、これでは人材採用が難しい。拘束時間が長いため、就職先としては敬遠されてしまいます。

 一方、客室清掃は昼間の3~4時間で仕事が終わります。しかし、8時間分の給料を出さないと、他の勤め先の方が「収入が良い」となって人材が集まらないので、8時間分の給料を出さないといけない。その結果、人件費率が…

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星野佳路

星野リゾート代表

 1960年、長野県生まれ。慶応大経済学部卒業後、米コーネル大ホテル経営大学院修士課程修了。91年に星野温泉(現・星野リゾート)代表。温泉旅館だった家業を「世界で通用するホテル会社」にするとの目標のもと、所有と運営を一体とする日本の観光産業でいち早く運営特化戦略をとり、大きく変貌、成長させた。