経済記者「一線リポート」

石炭火力の延命? 電力会社が「アンモニア」に熱い視線

工藤昭久・毎日新聞経済部記者
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アンモニアを混ぜて発電する実験を始めるJERAの碧南火力発電所=愛知県碧南市で(JERA提供)
アンモニアを混ぜて発電する実験を始めるJERAの碧南火力発電所=愛知県碧南市で(JERA提供)

 東京電力ホールディングス(HD)と中部電力が共同で設立した火力発電会社「JERA(ジェラ)」は、国内最大の発電事業者だ。同社は脱炭素の流れが強まる中、燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しないアンモニアを石炭火力発電に用いて、CO2削減に取り組む方針だ。その取り組みの成否は石炭火力の将来を左右する試金石として注目されている。

 2015年に発足したJERAは東京電力と中部電力の火力発電部門、燃料調達部門などを統合し、現在は国内電力量の約3分の1を供給している。昨年10月には、50年までに国内外の事業で排出するCO2を実質ゼロにする目標を公表した。

 これは菅義偉首相が同月、「50年実質ゼロ」の脱炭素宣言を行うよりも少し前のことだった。JERAの小野田聡社長は「世界的に50年に脱炭素を目指す動きは広がっており、グローバルにも事業展開しているだけに、なんとしても実現しないといけない」と意気込む。

既存の石炭火力で活用

 脱炭素社会の実現に向けて、政府は非効率な石炭火力については段階的に削減していく方針だ。石炭火力に対する逆風が吹く中でも電力会社が既存の石炭火力を使い続けるには、CO2排出量をできるだけ抑える必要がある。

 そこでJERAが注目しているのが、アンモニアだ。アンモニアは無色透明の気体で、特有の強い刺激臭があるため「劇物」に指定されている。現在は世界各地の化学工場で生産され、農作物の肥料や工業製品の原料に広く用いられている。

 アンモニアの分子式は「NH3」で水素(H)と窒素(N)で構成され、炭素(C)を含まない。このため、燃焼時に窒素酸化物(NOx)を排出するものの、CO2を…

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工藤昭久

毎日新聞経済部記者

 1974年生まれ。立教大学法学部卒。生命保険会社勤務を経て、2000年毎日新聞社入社。静岡、浜松支局を経て04年から東京経済部。財務、総務、経済産業、農林水産などの中央官庁や産業界、金融業界、財界などを幅広く取材。18年4月から大阪経済部編集委員として関西経済を取材。20年4月から経産、農水両省、エネルギー業界の取材を束ねるキャップ。