いま地球環境を考える

日本にいま必要な「カーボンプライシング」とは何か

小西雅子・WWF(世界自然保護基金)ジャパン専門ディレクター
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ドイツの石炭火力発電所。世界的に二酸化炭素削減の動きが進んでいる
ドイツの石炭火力発電所。世界的に二酸化炭素削減の動きが進んでいる

 菅義偉首相が2050年までに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量をゼロにする「2050年ゼロ宣言」をしてから、日本でも多くの企業が脱炭素化を競うようになりました。そこで企業の取り組みを後押しする「カーボンプライシング」という言葉が、にわかに取りざたされています。

 カーボンプライシングとは、炭素を排出することに価格を付けることです。CO2を排出したら、その量に応じて、企業や消費者にお金を払ってもらうという仕組みです。

 すなわち、CO2をなるべく出さない製品を作る企業の方が、より消費者に選ばれるということになります。経済的なインセンティブ(動機付け)を与えることによって、社会を脱炭素化の方向へ持っていく仕組みなのです。

炭素税と排出量取引制度

 カーボンプライシングには主に「炭素税」と「排出量取引制度」の二つがあります。炭素税は文字通り、炭素の排出量に応じて課税すること。そして「排出量取引制度」は、企業などに排出してもよい炭素の上限(排出枠)を設け、上限を超えた企業は、排出枠に余裕のある企業にお金を払って、排出枠を取引するという仕組みです。

 これらはCO2など温室効果ガス削減に効果のある手法として、世界中に広がっています。炭素税はフィンランドが1990年から導入し、欧州諸国を中心に広がりました。今では北米、南米など世界32カ国・地域に拡大しています。

 そして排出量取引制度は05年に欧州域内で導入され、アメリカの州レベルやオーストラリア等にも広がりました。世界最大のCO2排出国・中国でも全国レベルの排出量取引制度が20年から始まったのです。

経済成長はどうなる?

 「CO2を排出するのに…

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小西雅子

WWF(世界自然保護基金)ジャパン専門ディレクター

 神戸市生まれ。米ハーバード大修士課程修了、法政大博士(公共政策学)。中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005年に国際NGOのWWFジャパンへ。地球温暖化防止の国際交渉などで施策提言を行う。15年から昭和女子大特命教授を兼務する。東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会街づくり・持続可能性委員会委員、環境省中央環境審議会委員なども務めている。