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入山教授「トヨタ自動車・章男社長という”奇跡”」

入山章栄・早稲田大大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
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記者会見で質問に答える豊田章男社長(右)=東京都文京区で2018年、佐々木順一撮影
記者会見で質問に答える豊田章男社長(右)=東京都文京区で2018年、佐々木順一撮影

 入山章栄・早稲田大大学院教授の連載「未来を拓(ひら)く経営理論」は、世界の経営学の知見をビジネスパーソンが実践できる形で分かりやすく紹介していきます。今回のテーマは、トヨタ自動車です。

未来を拓く経営理論

 トヨタ自動車は、世界屈指のファミリービジネス(家業)の企業です。自動車業界が大きな変革の波にさらされようとしている今の時代に、創業家出身の豊田章男さんが社長であることは本当に「奇跡」のようだ、と私は考えています。

 言うまでもありませんが、自動車メーカーにとっても、これからは厳しい時代です。電気自動車(EV)とMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)が隆盛して、業界の構造が大きく変わっていく中で、トヨタもホンダも日産自動車も生き残っていける保証はありません。その中で、トヨタの経営陣は特に強い危機感を持っていると私は感じます。

創業者直系「本命中の本命」

 そこには、章男社長の存在があります。トヨタは豊田喜一郎さんが、父佐吉さんの築いた事業基盤を引き継ぎ、自動車業界に進出して創業しました。喜一郎さんの後、何代かの社長を挟んで、喜一郎さんの息子、章一郎さんが社長になりました。そこからさらに何代か挟んで社長になったのが、章一郎さんの息子である章男さんです。つまり章男さんはトヨタ自動車の創業者、喜一郎さんの直系の孫であり、3代目にあたります。まさに本命中の本命であり、若い頃から社内外で「ゆくゆくは章男さんが社長になる」と思われてきました。

 トヨタには、創業家から出た社長は新しい事…

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入山章栄

早稲田大大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授

 1972年生まれ。慶応大学経済学部卒業。米ピッツバーグ大経営大学院から博士号を取得。2013年に早稲田大大学院准教授。19年から現職。世界の経営学の知見を企業経営者やビジネスパーソンが実践できる形でわかりやすく紹介している。主な著書に「世界標準の経営理論」(ダイヤモンド社)など。