産業医の現場カルテ

がんサバイバーの復職「職場の配慮疲れ」どうする?

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 湯本さん(仮名、50代男性)は、約50人の従業員を抱える町工場の経営者です。産業医である私は先日、湯本さんから、病気療養で1年ほど休業してその後復職したBさん(40代男性)について相談を受けました。「Bさんが仕事をする上で配慮をしているのですが、周囲の従業員が困惑しているようです。どうすればいいでしょうか」といいます。

いつまで代わりを?

 Bさんは、がんと診断されて1年ほど闘病し、復職しました。休業前は製造現場で働いていましたが、長期療養で筋力や体力の低下が著しく、重い製造物を運ぶ作業などが難しくなっていました。また現在も定期的な通院が必要です。復職の際に、主治医からBさんへの配慮を求める意見書が出ており、私も産業医としてBさんの配置転換を検討するよう、湯本さんに意見していました。

 そのため、Bさんは主に事務作業を担当することになりました。湯本さんは配置転換の際、周囲の従業員もいるところでBさんに「あまり重いものを運ばないように」という話をしたそうです。

 それ以降、Bさんが筆記用具や文房具が入った段ボール箱などを持とうとすると、周囲の従業員が「Bさんはやらなくていいから」といって代わりに運ぶようになりました。

 当初、周囲の従業員は「Bさんは病気だったのだから」と積極的に代わりを務めていまし…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。