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「CO2の量で頭痛も」業務効率下げないオフィス換気法

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
 
 

 産業医である私は、あるメーカーの総務部に勤務する吉田さん(仮名、40代男性)から相談を受けました。吉田さんの会社は高層ビルにオフィスを構えています。「室内の換気が十分にできているかどうかをどう判断すればいいでしょうか」といいます。

ビル管理法の基準

 新型コロナウイルスの感染を防ぐために換気が推奨されるようになっています。窓や扉を開閉できるオフィスや、通勤電車内でも積極的に換気が行われるようになりました。窓を開閉できない高層ビルでは、空調設備で換気を行っています。吉田さんは、会社として感染対策の換気ができているかを心配していました。

 高層ビルや大規模な商業施設の場合は「ビル管理法」で、室内の二酸化炭素(CO2)の含有量や温度、湿度などの基準が定められています。二酸化炭素の含有量は1000ppm(100万分の1000)以下、温度は原則17度以上28度以下、湿度は40%以上70%以下に保つ必要があり、ビルのオーナーが管理責任を負います。吉田さんには、まずビルの管理者にオフィス内の状況を確認するように伝えました。

 ビル管理者からの報告によると、室内に従業員の数が多くなりがちな昼前や夕方に二酸化炭素の含有量が多めになりますが、基準を超える状況ではありません。換気は十分にできていると判断できました。

二酸化炭素が多いと……

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産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。