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認知症高齢者の預金「家族の引き出しOK」は本当か

渡辺精一・経済プレミア編集部
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 全国銀行協会が2021年2月、認知症高齢者やその家族らとの取引について指針を公表した。家族らが法的な代理人でなくても、本人の医療費などの支払いなどに限って預金の引き出しを認める考え方を示した。従来と何が変わるのだろうか。

使いにくい成年後見制度

 銀行預金は預金者の資産であり、引き出しは本人の意思で行う。本人が認知症などで判断能力が低下し意思表示ができなくなれば、家族でも代わりに引き出すことはできない。

 そうなると、本人の医療・介護費や生活費に充てたいのに、預金のお金が使えないという問題も生じかねない。

 どうすればいいのか。判断能力が低下した本人では財産管理や契約が難しい場合、その権利を支援・保護する法制度「成年後見制度」がある。家庭裁判所が選ぶ後見人が法的な代理人となり、本人の財産管理や身上監護(生活や医療・介護などの契約や手続き)を行う仕組みだ。銀行は通常、この成年後見制度の利用を促す。

 だが、成年後見制度の利用者は19年末で約22万人で認知症患者602万人(20年推計)に遠く及ばない。

 利用が進まないのは、制度の認知度が低いことに加え、使いにくいためだ。不正防止のため司法書士ら専門家を後見人に選ぶことが多いが、家族にとっては第三者に財産を委ねる違和感が大きい。後見人に支払う基本報酬(月2万~6万円が目安)も負担になる。

 このため、銀行の窓口に法的な代理人でない家族が訪れ「本人の預金を引き出したい」と求めてトラブルになることが増えている。

 全銀協の指針はこうした場合などの考え方を示した。成年後見制度の利用を促すのが基本だが、本人が判断能力を失う以前なら支払っていたはずの医…

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渡辺精一

経済プレミア編集部

1963年生まれ。一橋大学社会学部卒、86年毎日新聞社入社。大阪社会部・経済部、エコノミスト編集次長、川崎支局長などを経て、2014年から生活報道部で生活経済専門記者。18年4月から現職。ファイナンシャルプランナー資格(CFP認定者、1級FP技能士)も保有。