藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

米北東部「バーリントン」都市再生の“お手本の町”

藻谷浩介・地域エコノミスト
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人口4万人の町とは思えないにぎわいを見せるバーリントンの「チャーチストリート」(写真は筆者撮影)
人口4万人の町とは思えないにぎわいを見せるバーリントンの「チャーチストリート」(写真は筆者撮影)

米ダウンタウン編(1)

 車社会化の進んだ米国では、雑踏のある「ダウンタウン(中心市街地)」は絶滅状態だ。都心を観光客が歩くニューヨーク、ボストン、サンフランシスコなどは、ごく少数の例外である。ロサンゼルスが典型だが、多くの大都市の都心では、人が歩いているのは再生プロジェクトの行われているピンポイントの区画だけだ。これから全米10都市のダウンタウンの都市再生を見ていくが、初回のみ大都市ではなく、北東部バーモント州の小都市バーリントンを紹介する。ここが全米の取り組みの「お手本」となった場所だからだ。

サンダース氏が市長を務めた町

 2020年の米大統領選挙は民主党のバイデン氏が勝利した。民主党は左派の人気を集めたバーニー・サンダース上院議員の撤退で、党内票がまとまったことが大きかった。そのサンダース氏は、ニューヨークからバーモント州に移住した元ヒッピーで、1981年にバーリントン市長にわずか10票差で当選して就任。以降、政治家として飛躍を遂げていく。彼が8年間の若き市長時代に残した実績の一つが、町の中心部にある「チャーチストリート」の歩行者空間としての再生だった。

 バーリントンは人口4万人。チャーチストリートは南北にわずか4ブロックの歩行者専用道だ。93年の秋、車でバーリントン市街を通った際には、その存在にすら気付かなかった。見逃した再生事例を確認しようと再訪したのは、サンダース氏が16年の大統領選出馬で有名になる直前の、15年9月である。

 ニューヨークから真北に480キロを、車なら6時間、小型旅客機で1時間。ニューヨークを東京とすれば、北への距離も町の規模感も、バーリントンは…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。