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固辞から一転「南場智子氏」が経団連副会長となる理由

土屋渓・毎日新聞記者
DeNAの南場智子会長は経団連の副会長に内定した=東京都渋谷区で2018年3月2日、根岸基弘撮影
DeNAの南場智子会長は経団連の副会長に内定した=東京都渋谷区で2018年3月2日、根岸基弘撮影

 経団連が新たな副会長人事を3月8日に発表し、ディー・エヌ・エー(DeNA)の南場智子会長が女性初の副会長に就任することになった。6月の定時総会で正式に決まる。

 これまでオジサンばかりだった経団連の正副会長に南場氏が新風を吹き込み、経済界でも多様化が進むことを期待したい。長く重厚長大型産業や旧財閥系の大企業が中枢を占める経団連には課題が山積している。それだけにIT企業の経営者として実績のある南場氏が就任する意義は大きい。

 経団連の中西宏明会長は8日の記者会見で、南場氏起用の理由について「会議で一緒になるたびにアイデアや発言に感銘を受けた。この際、ぜひお願いします、ということにした」と晴れやかに語った。

これまで南場氏は経団連に距離

 実は前任の榊原定征会長時代から、経団連は南場氏に副会長就任を打診していた。しかし、南場氏はかねて「経団連は本当に経済界を代表する気があるのか」と疑問を抱いており、なかなか応じてもらえなかったという。

 経団連は自動車、電機、鉄鋼など重厚長大型の製造業や旧財閥系の銀行や生損保、商社などが今も中心メンバーで、歴代の正副会長を輩出している。

 南場氏からみれば、外資系やIT系の少ない経団連に魅力はなかったのだろう。実際にDeNAが経団連に入会したのは人事発表直前の3月1日で、それまでは距離を置いていた。

 経団連は「財界総理」と呼ばれる会長を中心に、閣僚に当たる副会長がこれまで18人いたが、いずれも男性ばかりだった。製造業や金融、商社など各業界や旧財閥のバランスを取りながら、人選を行ってきた。

 このため正副会長となる企業の顔ぶれは大きく変わらず、各業界を代表す…

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毎日新聞記者

1977年、ドバイ生まれ。2002年早稲田大法学部卒、毎日新聞社入社。水戸支局、東京本社学芸部などを経て14年から経済部。金融や通商、民間企業を取材した(16~17年まで大阪経済部)。