ニッポン金融ウラの裏

金融業界の権益争い再燃?「銀行と証券の隔壁」議論へ

浪川攻・金融ジャーナリスト
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東京都江東区で2018年7月15日、武市公孝撮影
東京都江東区で2018年7月15日、武市公孝撮影

 銀行と証券会社の業務を区切る業務隔壁、いわゆるファイアウオールのあり方を巡る議論が再開する。昨年、金融庁が開催する金融審議会の市場制度ワーキンググループで議論されたが、「国内顧客向けの業務は現状通り」で年末に終了した。隔壁の撤廃を強く求めた銀行側が「時間切れで煮詰まらなかった」として再開を求めた。

 銀行業界は昨年の議論で、「銀行と傘下の証券子会社による顧客情報の共有を認めること」を求めた。企業の株式や社債を証券会社が引き受ける業務や、M&A(企業の合併・買収)の分野で厳格な規制が行われており、情報共有を認めてもらい、銀行がグループとして本格的に参入する狙いがあった。

 これに対して、証券業界は「銀行の優越的地位の乱用」の懸念は払拭(ふっしょく)できないと猛反対した。社債や新株発行により企業が調達した資金で、既存の融資を返済させるような利益相反行為が起きかねないと主張した。

 その結果、海外の顧客については国際的な水準に合わせ、規制を緩めることで決着した。一方、国内の顧客に関してほぼ現状維持という内容で終了している。

「効率性」VS「利益相反」

 この問題は戦後の証券取引ルールを定めた旧証券取引法の第65条で、銀行と証券の業務を厳格に分離させたことを原点としている。時代の変化に沿って、銀行による投資信託の販売を解禁するなど、証券業務の間口を銀行業界に部分的に広げる政策が実行されてきた。

 昨年のワーキンググループの議論では「金融取引の効率性向上」と「利益相反」という二つの論点が軸になった。その一方で、銀行業界と証券業界の対立軸ばかりが露呈して、産業界からは「金融業界での権益争いに見え…

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浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。