経済記者「一線リポート」

地元で見えた「カリスマ経営者」スズキ会長の素顔

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記者会見で会長退任を発表するスズキの鈴木修会長。40年以上、経営トップを務めてきた=同社提供
記者会見で会長退任を発表するスズキの鈴木修会長。40年以上、経営トップを務めてきた=同社提供

 スズキのトップとして40年以上けん引した鈴木修氏(91)が今年6月で会長を退き、代表権も返上する。「庶民の足」として愛される軽自動車を日本に根付かせ、インド進出をいち早く決断し、スズキを世界的な自動車メーカーに育て上げたカリスマ経営者。2014~19年、静岡支局員として私が目の当たりにしたのは、修氏の地元政財界への強い影響力と、多くの人を引きつける気さくな人柄や圧倒的な存在感だった。

 修氏を初めて見かけたのは、支局に赴任して間もなくの頃だった。静岡県庁内を歩いていると、少し体格が丸く白い眉毛を蓄えた男性が川勝平太知事や多くの県幹部とともに階段を下りてきた。エントランスで知事らに見送られる中、スズキの小型車に乗り込んだ。その後もしばしば県庁内で姿を見かけることがあったが、「地元企業としてあいさつに来ているのだろう」と深くは考えなかった。

 修氏の影響力の一端を垣間見たのは、17年の静岡県知事選の取材のときだった。当時2期目だった現職の川勝知事の他に、民主党政権時に環境相を務めた細野豪志衆院議員(静岡5区)の出馬も取り沙汰されていた。動向がなかなかつかめず取材に四苦八苦していた時、ある静岡市議に言われたのは思いもしない言葉だった。「修会長のところには行ったか?」

 なぜ自動車メーカーのトップが、選挙に関係があるのか。不思議に思いながら朝、自宅前に取材に行くと、複数の社が集まっており、修氏が迎えの車の窓越しに取材に応じていた。17年の知事選では結局、川勝知事が出馬し、細野氏は出馬を見送っ…

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