
元本一部カットの通知(5)
東京23区内に住む男性会社員(50)が、弁護士に「スルガ銀行から元本カット通知がきた」と聞いたのは昨年12月だった。待望の通知だった。送られてきたPDFを開くと、物件を購入した際の借金を減額すると書かれていた。だが、減額する額は、借金約1億2000万円のうち600万円足らずだった。「まさか銀行はこれで終わらせるつもりか……」。男性は途方にくれている。
中古の2物件を立て続けに
元本カットが認められた物件は奈良県にある築24年の賃貸マンションだ。買ったのは3年余り前。都内の仲介業者から「スルガ銀行なら手元資金ゼロで購入できます。家賃は定額を振り込み、リスクは自分が負います」と勧められ、言われるまま購入した。
この仲介業者はその1カ月後、今度は大阪府の築28年の賃貸マンションを紹介してきた。約1億円の物件だった。「今でないとスルガの融資がつかない。あとわずかです」とせかされ、押し切られた。2カ月で中古2棟を購入し、約2億2000万円の借金を負った。スルガの担当は同じ新宿支店の行員。2017年の暮れだった。
年が明けてほどなく、シェアハウスへの不正融資が社会問題化した。スルガ銀行が組織的に不正に関与していたことが明るみに出た。同行はこの年、金融庁から業務停止命令を受けた。男性が中古2棟を購入したのは問題が噴出する直前のタイミングだった。
男性はシェアハウスを勧められなかった。だが、2棟を仲介した業者はシェアハウスを数多く手がけていた。家賃を2、3カ月振り込んできた後、業者は行方をくらました。物件は半分近くが空室だったことがわかった。
「自分のせいじ…
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