熊野英生の「けいざい新発見」

AIに為替取引を任せて“勝つ”ことはできるのか

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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 近年はAI(人工知能)を使ってさまざまなことが可能になっている。為替予測でも、相場変動のパターンを学習させて、その先にある値動きを読むシステム構築が可能だ。いわゆるチャート分析による売買は、このような発想で人間が行っているので、それをAIに判断させればよいということになる。

 しかし、そうした手法は成り立たないという見方もある。為替レートが過去のデータとは無関係に完全に不規則(ランダム)に動くという説もあるからだ。これを「ランダムウォーク」と言う。

「ランダムウォーク」はなぜ発生?

 例えば、チャートを使って売買する個人投資家がいるとして、別の投資家はチャートから導かれる売買のサインとは正反対の取引を仕掛けるプログラムを組むとしよう。

 やや専門的になるが、このとき、チャートを使って買い場だと判断する投資家がいたとすると、そこには需要が生じる。需要があれば価格は上がりやすくなる。それを察知した別の投資家は、今まで以上に割高で買ってもらえるから、売りを仕掛けてもうけることができる。ただ、そうした取引が行われると、買いは反対売買を浴びせられて、サイン通りには上がりにくくなる。結果的にチャートによる先読みは成立しにくくなる。

 ランダムウォークが発生する理由は、中学校の理科に出てくる粒子の「ブラウン運動」の原理と同じである。粒子の動く軌道は、一つの粒子が四方八方からくる別の粒子とぶつかることで無秩序な動きになる。無数の粒子の衝突が、一定のトレンドを消してしまうのである。為替市場では、いくつもの思惑がお互いにぶつかって取引されるので、ブラウン運動と同じことが起きる。

転換点を読むのは難し…

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熊野英生

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。