産業医の現場カルテ

社員増えたITベンチャー「衛生委員会」設置急いだ事情

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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衛生委員会の役割(2)

 産業医である私は昨年のある日、ITベンチャー企業で総務を担当する和田さん(仮名、30代男性)から連絡をもらいました。この会社が衛生委員会の働きかけで、在宅勤務の作業環境の改善に取り組む数カ月前のことでした(前回参照)。

従業員50人超の事業所に義務

 和田さんは「正社員が45人になりました。社長から社内の健康管理や就業環境を整備していきたいと言われ、私もそうしたいと考えています」と言います。産業医の選任や衛生委員会の設置の準備に取りかかりたいという相談でした。

 労働安全衛生法は、従業員数が50人を超える事業所に衛生委員会の設置を義務づけています。これを怠った場合、50万円以下の罰金を科されるケースがあります。

 和田さんの姿勢を頼もしく思いましたが、私は一つ気になることがありました。正社員以外の雇用形態で働く人がいるかどうかでした。確認すると、契約社員を中心にアルバイトを含めて常時十数人いるといいます。法律の定める50人超は、雇用形態にかかわらず常時使用する従業員を含みます。

 そのため和田さんは、早急に衛生委員会の設置を進めていくことにしました。

委員の人選はバランスよく

 会社は、衛生委員会を設置する前に、衛生管理者と産業医を選任し、労働基準監督署に届け出る必要があ…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。