
米ダウンタウン編(3)
米国で夏季オリンピックが開催された都市は三つある。戦前に1904年のセントルイス、32年のロサンゼルス、戦後は84年に再びロサンゼルス、そして96年のアトランタだ。コカ・コーラやCNNの本社があり、五輪開催の実力も持つ南部の都会・アトランタは、どんな町なのか。ダウンタウンに立ち寄ってみた。
電車の中から見た独特な地形
2015年の9月。ワシントンDC、ニューヨーク、ボストンで講演があった筆者は、行きのチケットをシカゴ乗り換えのアトランタ行き、帰りをボストンから成田への直行で手配した。成田からシカゴまで12時間。空港で米国入国手続きを含め3時間過ごし、さらにアトランタまで2時間の飛行。到着は午後3時(日本時間では午前5時)前だった。
アトランタからワシントンDCについては、別料金3万円を支払うことになったが、そこまでしてもアトランタの都心に寄ってみたかったのだ。ワシントンDCへのフライトまでの時間を利用してダウンタウンに向かった。空港から16キロ北にある都心までは、88年に開通したマルタと呼ばれる高架鉄道(都心部では地下鉄)が、片道2ドル50セントと格安料金で毎時8本も運行している。車内は清潔で安全だ。
マルタが地上を走っている間に気づいたのは、この都会の独特な地形である。緩い起伏の上に緑の住宅街が広がり、遠くに都心の高層ビル街が見えるが、山や川や湖がまったくない。
米国の大都市の多くは、海あるいは遡上(そじょう)可能な川や湖に面する港が、陸路への人の乗り換えと貨物の積み替え拠点となって発展した場所だ。平原や盆地の交易所が元になった大都市もある。
だ…
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藻谷浩介
地域エコノミスト
1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。