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星野さんが実践する「ポーターの競争優位戦略」

星野佳路・星野リゾート代表
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研修を受ける星野リゾートの新入社員=福島県磐梯町で、清水憲司撮影
研修を受ける星野リゾートの新入社員=福島県磐梯町で、清水憲司撮影

 星野リゾートの新入社員研修は、経営理論の大家、マイケル・ポーター米ハーバード大教授の「競争優位の戦略」を学ぶところから始まります。入社したての社員に経営理論を教えるのは、なぜでしょうか。それは星野さんが目指す「他社にはマネできない強み作り」につながっています。

星野佳路の家業のメソッド

 星野リゾートが目指す、社員一人一人が考え、発想し、仕事をするフラットな組織文化においては、個々の社員が会社の戦略を理解できていないといけない。サッカーでもチームの作戦が分かっていなければ、選手は動きようがないですよね。それと同じです。

 企業としてどう動き、どのように競争優位を確立し、それを維持していくのか。そこが分かっていないと、社内での議論に参加できない。それでは仕事がつまらなくなって、やがて辞めてしまう。だから最初から会社の戦略を理解してもらいます。

「会社の戦略」を伝えてこそ社員は動く

 社内では、ポーター理論の専門用語が飛び交っています。例えば「トレードオフを伴う活動を選択して、そのフィット感を整える」です。

 少し説明します。以前お話ししたように、競合他社がフロント、調理、食事提供、客室清掃を別々の人が担っているのに対し、我々はすべての社員がすべての業務に対応する「マルチタスク」を採用しています。

 トレードオフとは、何かを達成するためには、何かを犠牲にしないといけない状態のことです。マルチタスクを採用するには、従来の社員に慣れない仕事もしてもらう必要があり、辞める人が出てくるという犠牲…

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星野佳路

星野リゾート代表

 1960年、長野県生まれ。慶応大経済学部卒業後、米コーネル大ホテル経営大学院修士課程修了。91年に星野温泉(現・星野リゾート)代表。温泉旅館だった家業を「世界で通用するホテル会社」にするとの目標のもと、所有と運営を一体とする日本の観光産業でいち早く運営特化戦略をとり、大きく変貌、成長させた。