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「LINEの常識と世間の常識にズレ」個人情報問題で露呈

今沢真・経済プレミア編集部
無料通信アプリ「LINE」利用者の個人情報が中国の関連会社で閲覧可能だった問題を受け、記者会見する同社の出沢剛社長=東京都港区で2021年3月23日午後8時45分、玉城達郎撮影
無料通信アプリ「LINE」利用者の個人情報が中国の関連会社で閲覧可能だった問題を受け、記者会見する同社の出沢剛社長=東京都港区で2021年3月23日午後8時45分、玉城達郎撮影

 無料通信アプリ「LINE(ライン)」の個人情報管理に不備があった問題で、出沢剛・ライン社長は3月23日に開いた記者会見で「利用者にご迷惑をかけ、心からおわびする」と謝罪した。この問題が発覚した経過をたどると「ライン社内では常識だったこと」が社外では通用せず、報道や国会での審議を通じて大きな問題として社会に受けとめられたことが透けてみえる。

 LINEの情報管理で問題にされたのは主に次の2点だ。(1)ラインで利用者がやりとりした会話履歴や会員情報を、中国にある孫会社から閲覧できるようにしていた(2)利用者がラインに載せた写真や画像を、韓国にあるサーバーで保管していた。

 個人情報保護法は個人情報を外国から閲覧できるようにしたり、外国で管理したりする場合には利用者の同意を得るよう定めている。さらに、政府の個人情報保護委員会は原則として、管理先の国名を明記することを求めている。

 ラインのプライバシーポリシー(個人情報の取り扱い方針)では「第三国に個人データを移転することがある」と書かれていたが、国名を明示していなかった。出沢社長は「信頼を裏切ることになったことを重く受けとめている」などと謝罪した。

問題が発覚した経緯

 この問題が表面化した発端を振り返ってみよう。ラインの親会社であるZホールディングス(ZHD)=注=が3月8日に政府の個人情報保護委員会に対し、ラインの情報管理の問題を報告した。そして同17日に朝日新聞が特ダネとして報道して問題が明るみに出た。

 ZホールディングスはIT大手ヤフーの親会社であり、ラインと3月1日に経営統合したばかりだ。Zホールディングスはどのようにしてライ…

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経済プレミア編集部

1983年毎日新聞入社。89年経済部。日銀・財研キャップ、副部長を経て論説委員(財政担当)。15年経済プレミア創刊編集長。19年から同編集部。22年4月に再び編集長に。同9月から編集部総括。16年に出版した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機」など。16~18年度城西大非常勤講師。