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「社長室でメモ紛失?」掃除担当を怒鳴った社長の資質

舟木彩乃・産業心理コンサルタント・カウンセラー
 
 

 木村さん(仮名、20代後半男性)は、小売業の本社総務課(5人)に所属しています。おとなしい性格で口下手なところがありますが、頼まれた仕事を丁寧にする人です。

 総務課は、社長室の掃除を課員が交代で担当しています。夕方、担当の1人が個室の社長室に入って掃除をします。

ある朝「社長が怒っている」

 ある朝、木村さんが出社すると課長(40代後半男性)が、「今朝、社長が出社したら社長室の鍵が空いていたそうだ。デスクに置いていたメモもなくなっていたみたいで、かなり怒っている」と言ってきました。そして課長は木村さんに「昨日の掃除当番は君だよね?」と確認してきました。

 社長室の鍵を持っているのは、社長本人と総務課で、掃除が終わったら鍵を掛けて所定の位置に戻すことがルールになっています。

 昨日、社長室の掃除をしたのは木村さんですが、デスクにメモが置かれていた記憶はなく、鍵もかけたはずでした。それを課長に伝えると「とにかく社長のところへ行こう」と、課長と一緒に社長室に向かいました。

取り調べを受けているような…

 社長(50代後半)は、いつもピリピリしている印象があり、社員に恐れられています。社長室では機嫌の悪い顔をした社長が2人を待っていて、開口一番、「今朝は、部屋の鍵が開いていたぞ。デスクに置いておいたはずのメモもない。大事な情報を書いていたのに!」と怒鳴りつけたそうです。

 課長は、管理の不備を謝罪し、木村さんに昨日の掃除の状況について話すよう促しました。木村さんは、掃除のときはデスクの上のものは触らないようにしていることや、昨日は確かに鍵を掛けたことを説明しましたが、「では他に誰がやったの…

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産業心理コンサルタント・カウンセラー

 筑波大学大学院博士課程修了(ヒューマン・ケア科学博士)。一般企業の人事部などを経て、現在メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー企業)副社長。金融庁職員のメンタルヘルス対策にも従事する。国家資格として公認心理師、精神保健福祉士、第1種衛生管理者、キャリアコンサルタントなど保有。著書に「『首尾一貫感覚』で心を強くする」(小学館新書)。