
相続登記の大転換(3)
全国で増えている所有者不明土地の解消策として、土地の相続登記の義務化や、国が承認すれば所有権を放棄できる新制度の関連法案が今国会で審議中だ。その一環として、相続手続き自体にも見直しがある。遺産分割協議について新たに「10年」の期限を導入し、遺産をめぐって相続人が争う「争族」に一定の区切りを設ける。
故人の財産「どう分ける」
人が亡くなって相続が起き、複数の相続人がいる場合、亡くなった人(被相続人)の財産はどのように分けるのか。その点から確認しよう。
まず、被相続人が遺言で財産の分け方を示しているのなら、それに従うことになる。遺言で示していない場合は、原則として民法で定めた割合である「法定相続分」で分ける。例えば、相続人が妻と子2人の計3人なら「妻が2分の1、子は4分の1ずつ」という具合だ。
ただし、分ける方法を相続人が話し合い、全員が認めれば、遺言や法定相続分にこだわらずに分けることができる。これを遺産分割協議という。
相続が起きると、さまざまな手続きが必要になり、その期限が決まっている。相続放棄は3カ月以内、相続税の申告・納税は10カ月以内にしなければならない。
だが、遺産分割協議には法的な期限がない。このため、折り合いがつかなければ、ずっと結論を先送りすることもできてしまう。
相続税の税額は、遺産をどう分けるかによって変わるため、申告・納税期限である「10カ月」は、遺産分割協議でも目安として意識されやすい。
ただし、それまでに協議がまとまらなくても、財産を相続人全員で共有しているという前提で、各相続人が法定相続分にしたがって取得したものとみなし…
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渡辺精一
経済プレミア編集部
1963年生まれ。一橋大学社会学部卒、86年毎日新聞社入社。大阪社会部・経済部、エコノミスト編集次長、川崎支局長などを経て、2014年から生活報道部で生活経済専門記者。18年4月から現職。ファイナンシャルプランナー資格(CFP認定者、1級FP技能士)も保有。